澄明細胞性棘細胞腫（CCA）は、主に中高年者の下肢に発生する良性の皮膚腫瘍で、赤褐色のドーム状の隆起を形成します。その発生には、角化細胞の異常増殖や炎症が関与しており、ダーモスコピーによる「真珠の首飾り」のような血管構造が診断の特徴です。病理組織学的検査でグリコーゲンを豊富に含む澄明細胞や好中球の浸潤が確認されます。治療は単純外科的切除が主で、再発は稀です。
本記事では、本疾患の特徴から原因、診断方法、治療法まで詳しく解説します。
疾患の特徴
澄明細胞性棘細胞腫（Clear Cell Acanthoma, CCA）は、主に中高年者に発生する良性の表皮性腫瘍です。典型的には、下肢に赤色から褐色のドーム状の隆起（丘疹または局面）として現れ、大きさは5mmから2cm程度です。表面には鱗屑が見られることがあり、血管の点状構造が診断の一助となります。
ダーモスコピー検査では、特徴的な「真珠の首飾り」のような血管配列が観察されます。この所見は、基底細胞癌や扁平上皮癌などの悪性腫瘍との鑑別に役立つため、臨床診断において重要な役割を果たします。
原因と病態
澄明細胞性棘細胞腫の正確な原因は明らかになっていませんが、表皮の角化細胞の異常増殖が主要な要因とされています。病理組織学的に、腫瘍性増殖を示す細胞はグリコーゲンを豊富に含む「澄明細胞」として現れ、PAS染色で陽性を示します（ジアスターゼ処理後は陰性）。
また、病変部には好中球の浸潤や微小膿瘍の形成が見られることが多く、これらの炎症性反応が腫瘍形成に寄与している可能性が示唆されています。ただし、慢性的な刺激や炎症が発症リスクを高めるメカニズムについては、さらなる研究が必要です。
検査
臨床診断
赤褐色のドーム状隆起と、それに伴う「真珠の首飾り」のような血管配列が見られる場合、臨床的に澄明細胞性棘細胞腫が疑われます。特にダーモスコピーは、診断の迅速性と正確性を高めるツールとして有用です。
病理組織学的検査
病変部の組織を採取し、以下の特徴を確認します：
- グリコーゲンを多く含む澄明細胞の増殖。
- 好中球の浸潤や微小膿瘍の存在。
- PAS染色で陽性、ジアスターゼ処理後に陰性化する所見。
これらの所見は、基底細胞癌や扁平上皮癌、乾癬性病変などの鑑別診断において重要です。
治療
澄明細胞性棘細胞腫は良性疾患であり、治療は比較的簡単です。
外科的切除
局所麻酔下での単純な外科的切除が一般的で、最も高い治癒率を示します。適切に切除すれば再発は極めて稀です。
その他の治療法
レーザー治療や局所的な凍結療法（クリオサージェリー）も選択肢となる場合がありますが、標準的な外科的切除に比べて使用頻度は低いです。
予後
澄明細胞性棘細胞腫は悪性化のリスクがなく、切除後の予後は非常に良好です。適切な治療を受ければ再発する可能性も低く、患者の生活に大きな支障をきたすことはありません。
