血管内乳頭状内皮細胞増殖症とは?原因、症状から治療法まで徹底解説

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血管内乳頭状内皮過形成(Intravascular Papillary Endothelial Hyperplasia)は、血管内で内皮細胞が反応性に乳頭状に増殖する良性の病変です。主に四肢や頭頸部の皮下組織、口唇や舌に発生し、稀に顎骨や骨内にも見られます。その原因は血栓形成や外傷、既存の血管異常が関与すると考えられています。

診断には画像検査と病理組織学的検査が用いられ、他の血管性病変や悪性腫瘍との鑑別が重要です。治療は外科的切除が基本で、完全切除後の予後は極めて良好です。

本記事では、本疾患の特徴から原因、診断方法、治療法まで詳しく解説します

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疾患の特徴

血管内乳頭状内皮過形成(Intravascular Papillary Endothelial Hyperplasia)は、血管内で内皮細胞が反応性に増殖する良性の病変です。1923年にマッソンによって初めて報告され、「マッソン腫瘍」とも呼ばれています。臨床的には、腫瘤や結節として現れ、しばしば他の血管系病変と誤認される可能性があります。

発生部位

血管内乳頭状内皮過形成は、以下の部位に発生することが知られています。

  • 四肢や頭頸部の皮下組織や軟部組織
    最も一般的な発生部位で、皮膚や皮下層で認められることが多い。
  • 口腔領域
    特に口唇や舌に好発しますが、顎骨内での発生は非常に稀です。
  • その他の部位
    まれに骨や内臓器官に発生することも報告されています。

症状と外観

血管内乳頭状内皮過形成の臨床的特徴は以下の通りです。

  • 結節状または腫瘤状
    臨床的に弾力性を持つ結節や腫瘤として触知されることが多い。
  • 無痛性
    通常、痛みを伴わないが、大きさや発生部位により機能障害を引き起こす場合もあります。
  • 緩慢な成長
    腫瘤の増大は緩やかで、急速な進行は稀です。

病理組織学的特徴

血管内乳頭状内皮過形成の最も特徴的な病理学的所見は以下の通りです。

  • 血栓の存在
    血管内に形成された血栓が観察されます。
  • 乳頭状構造
    血栓の周囲に乳頭状に増殖した内皮細胞が確認され、コラーゲン基質がこれを支持します。
  • 周囲の血管壁
    腫瘤が既存の血管壁から明確に区別されることが特徴です。

他疾患との鑑別

血管内乳頭状内皮過形成は以下の疾患と類似した特徴を示すため、病理学的診断が重要です。

  • 血管腫
    血管内乳頭状内皮過形成は真性の血管腫とは異なり、反応性の病変です。
  • 血管肉腫
    悪性腫瘍と誤診されることがありますが、病理組織学的に異なります。
  • 肉芽腫
    炎症性肉芽腫との鑑別も必要です。

予後

血管内乳頭状内皮過形成は本質的に良性であり、完全に切除されれば再発することは稀です。悪性化のリスクはないとされていますが、適切な診断と治療が重要です。

原因と病態

原因

血管内乳頭状内皮過形成(Intravascular Papillary Endothelial Hyperplasia)の発生原因は明確には解明されていませんが、いくつかの要因が発症に関与していると考えられています。

  • 血栓形成
    血管内での血栓形成が、血管内乳頭状内皮過形成発生の主要な引き金となります。血栓が内皮細胞の修復反応を誘導し、病変の形成を引き起こします。
  • 外傷や炎症
    外傷や慢性炎症により、血管損傷や血栓形成が促され、それが血管内乳頭状内皮過形成の発症につながると考えられます。
  • 既存の血管異常
    血管腫や静脈瘤など、既存の血管異常が血管内乳頭状内皮過形成の発生基盤となる場合があります。この場合、既存病変の一部に血管内乳頭状内皮過形成が発生することが観察されています。

病態

血管内乳頭状内皮過形成は、血栓形成を基盤とした内皮細胞の反応性増殖による病変であり、以下のようなプロセスで進行します。

  • 血栓形成
    血管内での血栓形成が内皮細胞の増殖を引き起こします。この段階は、通常の組織修復プロセスと類似しています。
  • 乳頭状構造の形成
    血栓を中心に内皮細胞が乳頭状に増殖し、コラーゲン基質によって支持される構造を形成します。これが病理学的に血管内乳頭状内皮過形成を特徴付ける所見です。
  • 限局性の良性病変
    血管内乳頭状内皮過形成は反応性の良性病変であり、浸潤性や悪性化のリスクはなく、周囲の組織への破壊もほとんどありません。

特徴的な分類

血管内乳頭状内皮過形成は、病変の形態に基づき以下の3つに分類されます。

  • 純粋型(Pure form)
    血栓内で発生するタイプで、他の既存の血管性病変に関連しない最も基本的な形態です。
  • 混合型(Mixed form)
    血管腫や血管奇形など、既存の血管性病変に伴って発生するタイプです。このタイプでは、母地となる血管病変と血管内乳頭状内皮過形成が共存します。
  • 血管外型(Extravascular form)
    血管外で発生する稀なタイプで、外傷や炎症により血管壁が破壊されることで形成されます。

まとめ

血管内乳頭状内皮過形成は、これらの分類によってその発生背景や病態をより明確に理解することが可能です。病変の形態を正確に評価することで、診断および治療の最適化が期待されます。

検査

血管内乳頭状内皮過形成(Intravascular Papillary Endothelial Hyperplasia)の診断には、臨床的評価だけでなく、病理組織学的検査が不可欠です。他の血管性病変との鑑別が重要であるため、多角的なアプローチが求められます。

臨床診察

外観と触診
血管内乳頭状内皮過形成は、弾力性のある無痛性の腫瘤や結節として認められることが一般的です。大きさや形状は部位によって異なり、他の血管腫や肉芽腫と区別がつきにくい場合があります。

患者の病歴
外傷歴、既存の血管性病変の有無、あるいは局所の慢性炎症の履歴を確認することが診断のヒントになります。

画像診断

画像診断は、病変の位置や構造を明確にするために有用です。

  • 超音波検査
    血管性病変の初期評価として非侵襲的で簡便な方法です。血管内乳頭状内皮過形成では、境界が明瞭で内部が不均一なエコーパターンを示すことがあります。
  • 磁気共鳴画像(MRI)
    MRIは軟部組織病変の詳細な評価に適しており、T1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を示すことが一般的です。また、造影剤を使用することで病変内部の血管構造を可視化できます。
  • コンピュータ断層撮影(CT)
    骨内に発生する血管内乳頭状内皮過形成の場合、骨の構造変化を確認するために有用です。骨破壊の有無や石灰化が観察されることがあります。

病理組織学的検査

確定診断には病理組織学的な検査が必要です。

  • 標本の特徴
    • 血管内での血栓形成とそれを中心とした乳頭状の内皮細胞増殖。
    • 増殖した内皮細胞はコラーゲン基質に支持され、異型性は認められません。
    • 病変は明確な境界を持ち、周囲の正常組織に浸潤しません。
  • 免疫組織化学染色
    内皮細胞はCD31やCD34に陽性を示します。これにより、他の血管性病変(例:血管肉腫)との鑑別が可能です。

鑑別診断

血管内乳頭状内皮過形成は以下の疾患と症状が類似しているため、慎重な鑑別が必要です。

  • 血管腫
    血管性腫瘍であり、増殖性が異なります。
  • 血管肉腫
    悪性腫瘍であり、異型細胞や浸潤性増殖が特徴です。
  • 血栓性静脈炎
    血栓が認められるものの、反応性内皮細胞増殖はありません。

血管内乳頭状内皮過形成の診断は、画像診断で病変の性質を評価した後、病理組織学的検査で確定されます。特に血管肉腫などの悪性疾患と区別するため、内皮細胞の性状や病変の構造を詳細に評価することが重要です。

治療

血管内乳頭状内皮過形成(Intravascular Papillary Endothelial Hyperplasia)は本質的に良性の病変であり、適切な治療を行うことで良好な予後が期待されます。以下に治療の詳細を解説します。

治療の基本方針

血管内乳頭状内皮過形成の治療の基本は、病変の完全外科的切除です。完全切除により再発のリスクは非常に低くなります。

  • 切除範囲
    病変を周囲の正常組織ごと含めて切除することが推奨されます。これにより、病変が残存する可能性を最小限に抑えます。
  • 局所麻酔または全身麻酔
    病変の大きさや位置に応じて、局所麻酔または全身麻酔で手術が行われます。

術後の対応

  • 病理組織学的確認
    切除標本の病理組織学的検査を行い、血管内乳頭状内皮過形成であることを確定診断します。また、切除断端に病変が残存していないことを確認します。
  • 術後の経過観察
    再発の可能性を監視するために、術後定期的な経過観察が必要です。再発は稀ですが、発生した場合には追加の切除が行われます。

治療の補助的選択肢

血管内乳頭状内皮過形成は通常、外科的切除のみで治癒しますが、場合によっては補助的な方法が検討されることがあります。

  • 経過観察
    小さい病変で症状がない場合、または患者の健康状態が手術に適さない場合には経過観察が選択されることがあります。ただし、病変が拡大するリスクがあるため、慎重な管理が必要です。
  • 放射線治療や薬物療法
    血管内乳頭状内皮過形成は良性病変であるため、これらの治療は通常適応外です。しかし、診断が不確実な場合や切除が困難な症例では、他の治療法が補助的に検討される場合もあります。

予後

血管内乳頭状内皮過形成は良性であり、適切に治療されれば再発のリスクはほとんどありません。再発が見られる場合、多くは不完全切除が原因です。

  • 良好な予後
    完全切除された症例では、長期的に再発がないことが一般的です。
  • 稀な再発例
    再発が認められた場合、再度の外科的治療が必要となりますが、追加治療によって完全に治癒する可能性が高いです。

治療の課題

  • 早期診断の重要性
    他の血管性病変や悪性腫瘍との鑑別診断が困難な場合があり、診断が遅れることが治療計画の遅延につながる可能性があります。
  • 病変の部位による手術の困難性
    骨内や口腔内など、外科的切除が技術的に困難な部位に発生する血管内乳頭状内皮過形成は、特別な配慮が必要です。

血管内乳頭状内皮過形成は、治療法が確立された良性病変であり、完全切除による治癒が可能です。診断が適切でありさえすれば、患者は通常の生活に速やかに復帰できます。

この記事を書いた人
Dr.Yale

医学部卒業後、皮膚科学の奥深さと魅力に惹かれ、皮膚科医としての道を歩み始めました。臨床での豊富な経験を通じて、commonな疾患から美容皮膚科まで幅広く対応し、多くの患者様のサポートをしてきました。
患者様一人ひとりに寄り添った診療を心がけています。

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