モンドール病とは?原因、症状から治療法まで徹底解説

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モンドール病は、表在静脈に血栓や炎症が生じることで皮下に索状の硬結が触知される表在性血栓性静脈炎の一種です。胸部や乳房周辺での発症が多い一方、陰茎や上肢などにも生じることがあります。多くの場合は自然に改善が期待できますが、悪性疾患との関連が疑われるケースでは精密検査が欠かせません。また、痛みや違和感を伴うことがあるため、症状に合わせた保存的治療や血栓摘除術などの対応を検討します。

本記事では、本疾患の特徴から原因、診断方法、治療法まで詳しく解説します。

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モンドール病とは

モンドール病は、皮下にある表在静脈が血栓や炎症を起こすことで、皮膚表面に“索状”の硬いしこり(硬結)として触知される疾患です。この病気はフランスの外科医により最初に報告され、その名前が付けられました。主に胸壁や乳房、上腹部、腕に好発しますが、まれに陰茎など他の部位にも発生することが知られています。

皮膚表面の“索状”の特徴

多くの患者では、皮膚表面や皮下に沿って“索状”の硬結が触知されます。これは血栓化した表在静脈やその周囲組織の炎症が原因であり、局所的な痛みや軽度の皮膚の引きつれ感を伴うことがあります。

好発部位

モンドール病の好発部位として、以下が挙げられます:

  • 胸壁・乳房
    最も多く報告される部位です。特に乳房の外側や下部に生じることが多く、稀に腋窩(わきの下)に連続して硬結が触知されることもあります。乳房周辺で発生する場合、乳がんなどの悪性疾患との関連が示唆されるため注意が必要です。
  • 上腹部・肋骨下部
    肋骨に沿った部位に発症し、皮膚の引きつれ感を自覚する例が報告されています。
  • 上肢
    腕の表在静脈に発生すると、腕を動かす際に違和感や痛みを感じることがあります。
  • 陰茎
    比較的まれな部位ですが、陰茎に発生した場合、性交時の痛みや腫れが主な症状となります。稀少疾患として報告されることが多いです。

自然経過と注意点

モンドール病は多くの場合、数週間から数か月で自然に改善し、特別な処置を必要としないことが知られています。しかし、胸部や乳房周辺に発症する場合には、乳がんをはじめとする悪性疾患との関連が指摘されることがあり、慎重な鑑別やフォローアップが推奨されます。

性差や年齢層

モンドール病は男女を問わず発症する可能性があります。特に乳房への発症例が多い女性では、腫瘍との関連を調べるための精密検査が重要です。若年から高齢者まで幅広い年齢層で報告されていますが、日常生活での動作や衣服の締め付け、外傷などの誘因が症状を引き起こすこともあります。

日常生活への影響

モンドール病は強い痛みを伴うことは少なく、主に見た目や触ったときの違和感が問題となります。ただし、部位によっては、腕の動作、胸の圧迫、性交時などに痛みや不快感を伴う場合があります。症状が続く場合や、皮膚の発赤・腫れが広範囲に及ぶ場合には、蜂窩織炎など他の疾患との鑑別のため、専門医の診察を受けることが推奨されます。

原因と病態

モンドール病は、表在静脈の血栓形成と炎症が中心となって起こる「表在性血栓性静脈炎」の一種と考えられています。その原因や病態は多様で、以下のような要因が関与しているとされています。

血管壁への物理的刺激

胸部・乳房や腹部などの皮下静脈は、外部からの摩擦や圧迫など物理的刺激を受けやすい部位とされています。例えば、きつい下着や衣服による締め付け、腕の酷使、胸部や腹部への外傷などが、発症の引き金になる場合があります。これらの反復的な刺激が血管壁を損傷し、局所的な炎症や血栓形成を引き起こすと考えられます。

血栓形成のメカニズム

モンドール病の発症には、「血管内皮の損傷」「血液の凝固亢進状態」「血流のうっ滞」の3つの要素(Virchowの3徴)が関与している可能性があります。皮下静脈の壁に炎症や微小な損傷が生じることで血栓が形成され、静脈が塞がったり狭窄することで、痛みや腫れ、索状の硬結が発生すると考えられます。

基礎疾患との関連

胸部や乳房に発生するモンドール病の一部の症例では、乳がんなどの悪性疾患が隠れていることがあります。腫瘍による血管周囲組織への圧迫や、腫瘍細胞が分泌する物質が凝固や炎症反応を助長することが要因として挙げられます。また、外科手術や感染症、炎症性疾患なども、表在静脈の炎症や血栓形成を誘発する可能性があります。

部位による特徴

モンドール病の好発部位により、発症のリスク因子が異なる場合があります。

  • 胸壁・乳房では、乳腺周辺の血管が影響を受けやすく、下着や衣服の締め付け、乳房特有の組織構造がリスクと関連すると考えられます。
  • 陰茎では、性交や摩擦などの局所刺激が引き金になる場合があります。
  • 上肢や腹部では、腕の酷使や肋骨下部の皮膚を繰り返し圧迫する動作が、表在静脈への慢性的なストレスとなり得るとされています。

自己免疫やホルモン要因の可能性

一部の報告では、自己免疫が関与している可能性や、妊娠や経口避妊薬の使用などのホルモン状態が血栓形成を促進する一因となる可能性が示唆されています。しかし、これらの関連についてはまだ明確な結論には至っておらず、将来的な研究が必要とされています。

検査

モンドール病の診断は、視診や触診による臨床所見が基本となります。ただし、胸部や乳房などの重要な部位に生じた場合には悪性疾患との鑑別が必要なことも多く、画像検査を組み合わせた多角的な評価が行われます。

視診と触診

視診では、皮膚表面に索状の隆起や軽度の発赤が見られるかを確認します。胸部周辺では、腫瘍が疑われる所見(皮膚のくぼみや色調変化など)との鑑別が特に重要です。触診では、索状の硬結を確認し、その範囲や硬さ、痛みの有無を評価します。また、腋窩や肋骨下部、腕などの周辺部位に病変が広がっていないかを探ることも必要です。

超音波検査(エコー)/カラードップラー

超音波検査は、表在静脈の血流状態や血栓の有無、血管壁の肥厚を評価するために最もよく用いられる非侵襲的な検査です。索状の病変を可視化することで、血管炎または血栓によるものかを判別できます。特に乳房など複雑な組織を持つ部位では、詳細な観察が可能となり、診断精度が向上します。

マンモグラフィー(乳房X線撮影)

乳房周辺に病変がある場合、乳がんなどの悪性疾患を除外するためにマンモグラフィーが行われることがあります。腫瘍性変化が疑われる場合には、追加検査としてMRIや生検が検討されます。

MRI

超音波やマンモグラフィーで十分な情報が得られない場合、MRIを用いることで病変部の詳細な位置関係や血管の走行、周囲組織の状態を評価できます。また、陰茎や上腹部など評価が難しい部位に発症した際にも有効な検査手段となります。

病理検査(生検)

胸壁や乳房周辺に索状の病変があり、画像診断でも悪性疾患との鑑別が困難な場合には、生検が行われます。病理組織学的検査では、血栓性静脈炎を裏づける所見や腫瘍細胞の有無を確認し、確定診断を行います。

鑑別診断のポイント

モンドール病の診断では、以下の疾患との鑑別が重要です:

  • 悪性腫瘍:乳房付近に発症した場合、乳がんをはじめとする悪性腫瘍との区別が必要です。
  • 深部静脈血栓症(DVT):モンドール病は表在静脈が主な病変ですが、DVTは重篤な合併症を伴うため、エコーでの鑑別が求められます。
  • 蜂窩織炎などの皮膚感染症:発赤や腫れが目立つ場合には、感染症の可能性も念頭に置いて診察を進めます。

検査のまとめ

モンドール病は、視診や触診で診断に至ることが多いものの、胸部や乳房など重要な部位では悪性疾患の鑑別が欠かせません。超音波検査をはじめ、マンモグラフィーやMRI、生検などの補助的検査を適宜組み合わせることで、血栓性変化や炎症所見を多角的に評価し、早期の治療方針決定に役立てます。

治療

モンドール病は多くの場合、自然軽快が期待できるため、積極的な治療が必ずしも必要ではありません。しかし、痛みの緩和や合併症の予防、悪性疾患の除外など、患者の状態に応じた適切な治療が推奨されます。

保存的治療

保存的治療はモンドール病の治療の中心となります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服は、痛みや炎症を軽減するために有効です。また、患部を安静に保つことや、適度な圧迫を行うことで血行を改善し、痛みを和らげる場合があります。ただし、強い圧迫は血行障害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。さらに、温罨法(温湿布など)によって血流を促進し、血栓や炎症の軽減を図ることができます。

局所治療・外用療法

局所的な痛みや炎症を緩和するために、抗炎症作用を持つ外用薬や鎮痛クリームが使用されることがあります。これらの外用療法は、症状が強い場合の補助的な治療法として役立つことが多いです。

悪性疾患・合併症のマネジメント

胸部や乳房にモンドール病が発症した場合には、乳がんなどの悪性疾患を除外するための精密検査が欠かせません。腫瘍が否定された後は、保存的治療が中心となります。また、病変部に発赤や化膿が見られる場合には感染症の可能性を考慮し、抗生物質の投与が検討されることがあります。

外科的治療

保存的治療で症状が改善しない場合や、血栓が大きく血流障害を引き起こしている場合には、血栓摘除術が行われることがあります。ただし、外科的治療が必要になるケースは非常にまれです。また、悪性腫瘍が関連している場合には、原発巣の治療が優先されます。腫瘍治療の一環として、血管や周囲組織への対処が行われることがあります。

生活上の注意点

モンドール病の治療中には、以下の生活上の注意が重要です。下着や衣服による過度の締め付けを避け、身体に負担をかけない服装を心がける必要があります。また、軽度のストレッチや散歩など血流を促進する運動は有用ですが、痛みを誘発する動作は避けるべきです。胸部や乳房に病変がある場合は、悪性疾患の見落としを防ぐため、定期的なフォローアップを行うことが推奨されます。

まとめ

モンドール病の治療は、保存的治療を中心に行い、痛みや炎症をコントロールしながら自然経過を見守ることが一般的です。一方で、胸部や乳房に生じた場合には悪性疾患との鑑別が不可欠であり、必要に応じて外科的処置や追加検査が検討されます。患者の生活習慣や基礎疾患の有無に応じた柔軟な治療計画を立てるため、専門医との連携が重要です。

この記事を書いた人
Dr.Yale

医学部卒業後、皮膚科学の奥深さと魅力に惹かれ、皮膚科医としての道を歩み始めました。臨床での豊富な経験を通じて、commonな疾患から美容皮膚科まで幅広く対応し、多くの患者様のサポートをしてきました。
患者様一人ひとりに寄り添った診療を心がけています。

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血管炎
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