皮膚結節性多発動脈炎とは?原因、症状から治療法まで徹底解説

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皮膚結節性多発動脈炎は、主に皮膚に限局して中小動脈に炎症を引き起こす稀な血管炎であり、圧痛を伴う皮下結節や網状皮斑、場合によっては潰瘍や壊疽などがみられます。その原因には免疫複合体の形成やウイルス感染が関与し、血管壁の炎症と循環障害が病態の中心となります。診断には臨床症状の評価と皮膚生検が重要で、炎症マーカーの測定や感染症のスクリーニングが補助的に行われます。治療は軽症例では局所療法、重症例ではステロイドや免疫抑制薬の全身投与が適用され、ウイルス感染が原因の場合は抗ウイルス療法が検討されます。

本記事では、本疾患の特徴から原因、診断方法、治療法まで詳しく解説します。

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  1. 疾患の特徴
    1. 主な特徴
      1. 好発部位
      2. 皮膚病変の種類
      3. 年齢層と性別
      4. 臨床経過
      5. 全身症状の欠如
    2. 稀少性と重要性
    3. 症状が日常生活に与える影響
  2. 原因と病態
    1. 原因
      1. 免疫学的要因
      2. 感染症との関連
      3. 薬剤や外的要因
    2. 病態
      1. 血管炎のメカニズム
      2. 血管の閉塞と循環障害
      3. 皮膚に限定される理由
    3. 遺伝的および環境要因
    4. 炎症の制御機構の破綻
  3. 検査皮膚結節性多発動脈炎の診断には、臨床症状の評価とともに、病理学的検査を含む複数の検査が重要です。この疾患は他の血管炎や疾患と症状が重複することがあるため、適切な検査を行うことで診断の確定と鑑別が可能となります。臨床的評価視診と触診四肢(特に下肢)における皮下結節、網状皮斑、潰瘍、壊疽などの病変を確認します。圧痛を伴う皮下結節は、典型的な初見です。網状皮斑は循環障害を示唆し、診断の手がかりになります。病歴の聴取症状の出現時期や再発歴。ウイルス感染や薬剤使用歴、家族歴などを含めた詳細な病歴を確認します。
    1. 血液検査血液検査は診断を補助する手段であり、特異的な所見はないものの、炎症や感染の有無を評価します。炎症マーカーC反応性タンパク質(CRP)の上昇。赤血球沈降速度(ESR)の亢進。感染スクリーニングB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの抗体を測定します。ウイルス感染が原因の一つとされるため、これらの評価は重要です。血清補体値補体成分の消費がみられる場合があり、免疫複合体の関与を示唆します。自己抗体検査抗核抗体や抗好中球細胞質抗体は通常陰性ですが、他の血管炎との鑑別に有用です。
    2. 皮膚生検皮膚生検は、診断において最も重要な検査の一つです。組織学的所見中小動脈のフィブリノイド壊死(血管壁の壊死性変化)。血管壁や周囲組織への好中球浸潤。血管内腔の閉塞や血栓形成。生検結果は、他の血管炎や膠原病性疾患(例:クリオグロブリン血管炎)と鑑別するために不可欠です。
    3. 画像検査ダーモスコピー(皮膚鏡検査)網状皮斑や結節の詳細な構造を観察するために用います。血管造影通常の皮膚結節性多発動脈炎ではあまり用いられませんが、必要に応じて動脈の狭窄や閉塞を確認するために行います。
    4. 鑑別診断この疾患の診断では、他の疾患との鑑別が非常に重要です。他の血管炎全身性結節性多発動脈炎、クリオグロブリン血管炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎。その他の皮膚疾患蜂窩織炎、脂肪織炎、リベド血管炎。
    5. 診断基準皮膚結節性多発動脈炎の診断には明確な基準が存在するわけではありませんが、以下の3つが揃うことで診断の可能性が高まります:皮膚症状(圧痛を伴う結節や網状皮斑)。生検で血管炎の所見が確認される。他の原因(感染症、自己免疫疾患など)が除外されている。
  4. 治療
    1. 軽症例の治療
    2. 中等症から重症例の治療
    3. ウイルス関連の治療
    4. 外科的治療
    5. 補助的治療
    6. 慢性例・再発例の治療
    7. 治療の効果と予後

疾患の特徴

皮膚結節性多発動脈炎(cutaneous polyarteritis nodosa)は、中小動脈に炎症を引き起こす稀な血管炎であり、主に皮膚に限定して症状が現れる疾患です。この病気は、全身性の結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa)と区別され、内臓や他の全身器官への障害がみられないのが特徴です。

主な特徴

好発部位

皮膚結節性多発動脈炎は四肢、特に下肢に発生しやすく、膝下が典型的な病変部位です。

皮膚病変の種類

  • 皮下結節
    圧痛を伴う硬い結節が皮下に形成されることが多く、主な臨床所見となります。
  • 網状皮斑(リベド網状皮斑)
    網目状の紫斑が皮膚表面に現れ、血管炎による循環障害を反映しています。
  • 潰瘍
    病変が進行した場合に見られ、特に血流の低下が著しい部位に形成されます。
  • 壊疽
    極めて重症例に限られますが、血管の閉塞に伴い末端壊死が起こることがあります。

年齢層と性別

成人の男性に多くみられる傾向がありますが、女性や小児に発生する場合もあります。

臨床経過

病変は一過性である場合が多いものの、再発を繰り返すケースも少なくありません。慢性的な経過をたどることが多く、治療が遅れると病変が悪化するリスクがあります。

全身症状の欠如

全身性の結節性多発動脈炎と異なり、皮膚結節性多発動脈炎では発熱、体重減少、倦怠感などの全身症状はほとんどみられません。この点が疾患の診断において重要な鑑別点となります。


稀少性と重要性

皮膚結節性多発動脈炎は非常に稀な疾患であり、正確な発生頻度は不明です。多くの文献で報告される症例数は限られています。そのため、疾患についての認識と適切な診断が、患者の早期治療と予後改善において重要です。


症状が日常生活に与える影響

圧痛を伴う結節や潰瘍は、患者の生活の質に大きな影響を与えます。特に、歩行時の痛みや見た目の変化による心理的ストレスや活動制限が挙げられます。これらの症状を管理することは、患者の身体的および精神的な健康を維持するうえで重要です。

原因と病態

皮膚結節性多発動脈炎は、主に皮膚の中小動脈に炎症を引き起こす血管炎であり、その原因と病態については完全には解明されていないものの、いくつかの要因が関与していると考えられています。


原因

免疫学的要因

  • この疾患の病態には、自己免疫反応が関与していると考えられています。特に、抗原と抗体が結合した免疫複合体が血管壁に沈着し、補体の活性化を介して炎症を引き起こすことが示唆されています。
  • 一部の症例では、低温環境で沈殿する異常なタンパク質であるクリオグロブリンの関与が報告されていますが、これが皮膚結節性多発動脈炎に特異的であるわけではありません。

感染症との関連

  • 一部の症例では、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスなどのウイルス感染が背景に存在することが報告されています。
  • 感染に伴う免疫応答が血管炎の発症に寄与する可能性があります。

薬剤や外的要因

  • 特定の薬剤や化学物質への曝露が引き金となる場合があります。
  • 外傷や寒冷環境も、一部の症例で病変を誘発する因子として報告されています。

病態

血管炎のメカニズム

  • 免疫複合体が血管壁に沈着すると、補体経路が活性化され、血管内皮細胞に炎症が生じます。
  • 炎症細胞である好中球やマクロファージが動員され、血管壁に浸潤し、フィブリノイド壊死と呼ばれる血管壁の変性と壊死を引き起こします。

血管の閉塞と循環障害

  • 血管壁の炎症によって血管腔が狭窄し、血流が低下します。これにより、皮膚組織への酸素供給が不十分となり、網状皮斑や潰瘍、壊疽といった病変が形成されます。

皮膚に限定される理由

  • この疾患が全身性の結節性多発動脈炎と異なり、皮膚に限局する理由は明らかではありません。しかし、皮膚血管の特異的な構造や局所免疫の特性が関与している可能性が示唆されています。

遺伝的および環境要因

  • 遺伝的な素因や環境因子も、疾患の発症に関与していると考えられます。例えば、特定のHLA遺伝子型が関連している可能性や、地域ごとの感染リスクが発症に影響を与えることが示唆されています。

炎症の制御機構の破綻

  • 皮膚結節性多発動脈炎は、免疫応答の制御機構が破綻することで持続的な炎症が引き起こされる疾患の一つと考えられています。そのため、治療の中心は炎症を抑制し、病変の進行を防ぐことにあります。

検査皮膚結節性多発動脈炎の診断には、臨床症状の評価とともに、病理学的検査を含む複数の検査が重要です。この疾患は他の血管炎や疾患と症状が重複することがあるため、適切な検査を行うことで診断の確定と鑑別が可能となります。臨床的評価視診と触診四肢(特に下肢)における皮下結節、網状皮斑、潰瘍、壊疽などの病変を確認します。圧痛を伴う皮下結節は、典型的な初見です。網状皮斑は循環障害を示唆し、診断の手がかりになります。病歴の聴取症状の出現時期や再発歴。ウイルス感染や薬剤使用歴、家族歴などを含めた詳細な病歴を確認します。


血液検査血液検査は診断を補助する手段であり、特異的な所見はないものの、炎症や感染の有無を評価します。炎症マーカーC反応性タンパク質(CRP)の上昇。赤血球沈降速度(ESR)の亢進。感染スクリーニングB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの抗体を測定します。ウイルス感染が原因の一つとされるため、これらの評価は重要です。血清補体値補体成分の消費がみられる場合があり、免疫複合体の関与を示唆します。自己抗体検査抗核抗体や抗好中球細胞質抗体は通常陰性ですが、他の血管炎との鑑別に有用です。


皮膚生検皮膚生検は、診断において最も重要な検査の一つです。組織学的所見中小動脈のフィブリノイド壊死(血管壁の壊死性変化)。血管壁や周囲組織への好中球浸潤。血管内腔の閉塞や血栓形成。生検結果は、他の血管炎や膠原病性疾患(例:クリオグロブリン血管炎)と鑑別するために不可欠です。


画像検査ダーモスコピー(皮膚鏡検査)網状皮斑や結節の詳細な構造を観察するために用います。血管造影通常の皮膚結節性多発動脈炎ではあまり用いられませんが、必要に応じて動脈の狭窄や閉塞を確認するために行います。


鑑別診断この疾患の診断では、他の疾患との鑑別が非常に重要です。他の血管炎全身性結節性多発動脈炎、クリオグロブリン血管炎、抗好中球細胞質抗体関連血管炎。その他の皮膚疾患蜂窩織炎、脂肪織炎、リベド血管炎。


診断基準皮膚結節性多発動脈炎の診断には明確な基準が存在するわけではありませんが、以下の3つが揃うことで診断の可能性が高まります:皮膚症状(圧痛を伴う結節や網状皮斑)。生検で血管炎の所見が確認される。他の原因(感染症、自己免疫疾患など)が除外されている。

治療

皮膚結節性多発動脈炎の治療は、疾患の重症度、進行状況、患者の背景(年齢、合併症など)に応じて決定されます。治療の主な目標は、炎症を抑制し、病変の進行を防ぎ、症状を改善することです。

軽症例の治療

軽症例では、皮膚に限局した症状(圧痛を伴う結節や網状皮斑)がみられることが多く、以下のような局所療法が選択されます。

  • ステロイド外用薬
    主に結節や炎症部位に塗布し、局所の炎症を抑制します。
    外用ステロイドは副作用が少なく、軽症例において最初に使用されることが一般的です。
  • 鎮痛剤
    痛みを緩和するために非ステロイド性抗炎症薬が用いられることがあります。

中等症から重症例の治療

皮膚潰瘍や壊疽など、進行性の病変がある場合には全身療法が必要となります。

  • ステロイド内服
    プレドニゾロンが主に使用され、炎症を迅速に抑える効果があります。
    初期投与量は1日5~20mg程度から開始されることが多く、症状の改善に応じて減量します。
  • 免疫抑制薬
    ステロイドが十分な効果を示さない場合、または副作用を軽減するために併用されることがあります。主な薬剤として以下が挙げられます:
    • メトトレキサート
    • アザチオプリン
    • シクロスポリン
      これらの薬剤は、免疫応答を抑制し、血管炎の進行を防ぎます。
  • コルヒチン
    炎症性疾患に対する治療薬で、一部の症例で有効とされています。

ウイルス関連の治療

  • B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが原因の場合
    抗ウイルス療法が治療の中心となります。
    • B型肝炎ウイルス感染では、核酸アナログ(エンテカビルなど)による治療が行われます。
    • C型肝炎ウイルス感染では、直接作用型抗ウイルス薬が使用されます。

外科的治療

壊疽や深刻な潰瘍が進行した場合には、外科的治療が必要になることがあります。

  • 壊死した組織の切除。
  • 潰瘍のドレナージや創傷ケア。

補助的治療

  • 循環改善薬
    血流を改善する薬剤(プロスタグランジン製剤など)を使用し、壊疽や潰瘍のリスクを低下させます。
  • 生活指導
    • 適度な運動による循環改善。
    • 外傷の回避や感染予防を心がけることで皮膚病変の悪化を防ぎます。

慢性例・再発例の治療

皮膚結節性多発動脈炎は再発を繰り返す場合があるため、長期的な経過観察と治療計画が重要です。

  • 再発リスクを減らすため、免疫抑制薬の維持療法や定期的な血液検査による炎症マーカーのモニタリングが行われます。

治療の効果と予後

  • 早期診断と適切な治療により、多くの症例で病変の進行を防ぎ、患者の生活の質が改善されます。
  • 重症例や再発例では、長期的な治療と経過観察が必要となります。

この記事を書いた人
Dr.Yale

医学部卒業後、皮膚科学の奥深さと魅力に惹かれ、皮膚科医としての道を歩み始めました。臨床での豊富な経験を通じて、commonな疾患から美容皮膚科まで幅広く対応し、多くの患者様のサポートをしてきました。
患者様一人ひとりに寄り添った診療を心がけています。

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